本日は教員をしながらアドベンチャーレース世界大会にも出場する杉田明日香さんに、スポーツとライフスタイルについてインタビューしました

一戸:はじめまして。まずはアドベンチャーレースについて教えてください

杉田:アドベンチャーレースは地形図を読みながらMTBをしたりトレッキングをしたりカヤックだったりラフティングのような水系の種目もする競技なんです。設定されたチェックポイントを全部回って誰が一番早くゴールできるかという競技で、3人ないし海外だと4人のチームで行ないます。1人だけ速い人がいてもダメで、チーム内で励ましあって一緒に進まないといけないチーム競技です。

一戸:始めてどのくらいですか?

杉田:5年くらいですけど、今でも地図読みは難しくて苦手意識があります。だけどチームに得意な方がいて自分の苦手を補ってもらってます。そうやってレースを進めていって上位に入るとすごく嬉しいです。

一戸:5年前にアドベンチャーレースを始めてキッカケはなんですか?

杉田:元々自分の人生の中でターニングポイントが2つあって、1つ目が中学生のときに陸上部だったんですけど、陸上でオリンピック選手にはなれないな、って気づくんですよ。でも何でもいいからスポーツの世界大会のゴールで日の丸と写真を撮りたいって急に思ったんですよ。でもそれを忘れて大学でスポーツをやってたけど、どのスポーツなら上位に入れるかなって視点で見てました。2つ目は20歳のときにアートスポーツ渋谷店の入口のラックに初心者向けのアドベンチャーレースのチラシがあったんです。それを見た瞬間にコレ私向いてるなって思ったんです。そのとき1人だったんですけど、将来絶対やるなって思ったんです。

一戸:それまで山に行ったりとかは?

杉田:全然やってないし、陸上競技場にしかいなかったんですけど、カッコいいな、なんかこれは向いてるなって思ったんです。で、就職して少し落ち着いたときに、じゃあやろう!ってエントリーしたんです。

一戸:仲間はいたんですか?

杉田:全然いないです。1人だったんですけど、たまたま関西で講習会があって主催者に直接電話して「行きます」って言ったら、みなさんホントにいい人で、それではまっちゃいました。

一戸:人の良さだけで?

杉田:運動もしてないし、体育も得意じゃないけど、その夜に山でナビゲーションをしたんですけどスゴク楽しくて、人はいいし、60歳くらいのおじさんたちがバリバリやってて、普通の生活では知りえない人と会えるというのがはまったキッカケですね

一戸:その講習会に出てそのまま大会にエントリーして

杉田:そのときは全然知らなかったけど、アドベンチャーレースってそもそも狭い世界で、トレイルランニングは最近人気が出てきていろんな人がいますけど、アドベンチャーレースをやってる人はほとんどいないし、当時は25歳くらいの女の子は珍しくて、みんなが声をかけてくれるんです

一戸:若い女の子が来たって

杉田:そうそうそう!そんな感じです!みんなでお世話をしてくださって、MTBを持ってないって言うと貸してくれてスペシャリストを紹介してくれてライドの講習会をしてもらったり、カヤックができないって言うとカヤックを教えてくれて

一戸:いかに続けてもらえるか、若手のホープを育てないとみたいな感じですね

杉田:ホントにそうでした。みなさんとても優しかったです。そんなことしてると毎週末に遊びに行っていろんな人に会って、こんな人もいてこんな風に競技をしてるんだな、こんな大会があってこういうスタンスでやってるんだなっていうことを聞いて、それが楽しい

一戸:それでどっぷりはまった

杉田:どっぷりはまって走り続けてきたって感じです

一戸:平日は普通に仕事をしてるんですよね

杉田:平日は仕事してます。幸い土日は休みなので遊べて、平日も家の近くに山があって朝とか夕方に少し走ったりします。練習って感じじゃなく普通に行きますね。

一戸:でも走るだけじゃないじゃないですか、それこそカヌーに乗る練習を身近な所でチョットって訳にはいかないですよね

杉田:そう!カヤックはそうならないじゃないですか。だから日本人は得意じゃないですよね、海外のレースへ行ってもパドリングは海外の選手に比べて慣れてないですね。でも土日に奥多摩へ行ってガッツリ漕いだり葉山行ったり西伊豆行ったりいろんな所でいい先生を紹介してもらって、みんな日本でならこの人に教えてもらいたいって人で、そんな所に行ったらはまるしかないじゃないですか。教え方も当然上手いし自分の技術も上がるし、その人たちから冒険の話を聞いて刺激を受けて、なんて面白いんだろう!みんな変態です。

一戸:マイナー競技って変態多いじゃないですか、でも変態はみんないい人

杉田:(うなづく)

一戸:アドベンチャーレースってカテゴリーがあるんですか?

杉田:スカイランニングとかトレイルランニングとかと違ってアドベンチャーレースは日本ではまだまだ多くないので、日本では大きく分けて3つ、1つ目は初心者向けのエクストリームシリーズ、中上級者向けのARJS、その上のクロスアドベンチャーって3日間くらいのロングレースがあるんですけど主に3つしかなくて距離も初心者向けは30~40km、中級者向けは2日で1日やって泊まって1日やる、距離が長かったり水系がガッツリ入る。クロスアドベンチャーは長い。日本ではまだまだカテゴライズされてないですね

一戸:じゃあ本格的にやろうと思ったら海外に行くしかない?

杉田:海外のワールドシリーズはシリーズ戦になっててそれも規定がはっきりと決まっているわけじゃない、地形や自然環境に合わせてコースがディレクションされてて、川とか湖へ行かせたければそっちがメインになるし山が良かったらそっちになるし決められないんですよね。カテゴライズするのは難しいんです

一戸:順番とかもその大会によって違うって聞きました

杉田:そうそうそう

一戸:その人たちで決められる

杉田:そうですね、回り方とか種目も。あるときはMTB⇒カヤック⇒ランニングかもしれないし、ランニング⇒カヤック⇒MTBのときもある。ランニングの中でもポイントの回り方がそれぞれチームで違って道がないので地図を見て散っていく

一戸:これ(レースマップを見ながら)順番は決まってないんですか?この数字順に回るとかでもなく?

杉田:基本的には数字順に回るんですけどここなんかはどういう順で回ってもいいよって指示が出されて、そうすると選手はこの辺をウロウロする。(違う地図をひろげながら)これはロングで海外の5万分の1の地図で、英語でレギュレーションに書いてあることをうちのメンバーは英語が得意じゃなかったから日本語でメモしてます。(ディレクションを見ながら)コレはディレクションです、MTBがあってパドルがあって距離が書いてあって・・・

一戸:え~!MTB214km!?

杉田:(笑)

一戸:その後、トレック30km、MTB79km、トレック64kmってスゴーイですねぇ。こんなにすごいレースに出るチームをどうやって結成したんですか?

杉田:アイルランドのこのレースに去年の8月に出たんですけど、海外レースは初めてだったんです。ワールドシリーズの1戦なんですけど、やり始めたときからずっと出たかったんです、他の仲間たちが行った海外レース映像を観たり話を聞いたりして、行こう!って決めて夏休みを取りました。でもメンバーがいなくて最初の1人はすぐに決まったんですけど後が決まらなくて、でも絶対に出たくて毎日いろんな人に電話してナンパ(営業)しました。今回出た4人のうち1人はずっと組んでた人で、後の2人は1回か2回しか会ったことなくてなんとなくフィーリング合った、この人いいんじゃないかな雰囲気が。私としては競技でMTBが速いとかナビゲーションができるとかじゃなくて、5日間一緒にいるので一緒にやって楽しいを重視してピンポイントで声を掛けさせてもらいました。めっちゃ良かったですよ~

一戸:5日間でケンカとかしないんですか?

杉田:うちのチームはないですね。みんな穏やかなメンバーでカリカリしないですね

一戸:写真とかめちゃめちゃきれいですね

杉田:写真見ます?ありますよ
(練習風景写真を見ながら)このレースに出るために半年間ずっと練習してたんです。そういうのって高校の部活のときくらいしかないじゃないですか、これのためにみんなでやるって

一戸:やっぱり練習も同じメンバーで集まってやるんですよね

杉田:4人だったんですけど、みんな集まって計画を立てて、みんな仕事があるので考慮して組むんですけどチーム練習はチョットしかできなくて、でもその中でいかに作っていくかっていうのは大変でもあり楽しかったですね。文化祭がずっと続くような感じ

一戸:チーム競技は大人になると集まれなくて試合に出られない、出られても練習なしってのが多いからチームがあってゴールに向かって一緒に練習するって大人になってからやるっていっそう楽しいですよね

杉田:ホント楽しかったです。なんか未知数、日本人で誰も出たことがなかったレースなので出たかったんです。聞いた大会もいいけど知らない大会に出たかった。

一戸:日本人初

杉田:はい。だから向こうでも歓迎してもらいました

一戸:スゴーイ

杉田:これはハイライト版で、自分でもレース中にいっぱい撮ってたんですけどラスト2時間くらい最後の最後の湖でカメラを落としちゃってホントにショックでもう漕げない悲しすぎて。もはやそれもいい思い出ですけど。この写真は同行してくれたカメラマンの写真で、これカッコよくないですか?

一戸:スゴーーーイ!ホントに冒険ですよね

杉田:ホントにいいんですよ、現地の人についてもらったりして

一戸:途中でなんでこんなことやってるんだろうってならないんですか?

杉田:ならなかったですね

一戸:トライアスロンやってて後半疲れてくるとなんで好きでこんなことやってるんだろう、周りの人もなんでこんな苦しい顔してやってるんだろうって思って、終わった瞬間あ~楽しかったってなるんです。途中で1回心が折れそうになるんです。そういうのないのかなって思って。これだけの日数と距離があって

杉田:始めて2年くらいのときはそう思ってました。

一戸:お風呂に入りたいなぁとか

杉田:それは思いますね。でも何でこんなこととは思わなくなりましたね。(雑誌を見ながら)この写真いいでしょう!アドベンチャースポーツマガジンは私が始めたときには廃刊してたから雑誌が無かったんです。私は写真が好きでいろいろ取り寄せて、自然の中に人がポツンといる写真がすごい好きなんです。

一戸:今も雑誌は無いんですか?

杉田:今はあるんです。この雑誌の編集長のクボタさんがカメラマンと編集をしている雑誌で2013年に創刊で年に1回くらい発売されます。

一戸:写真がいいですねぇ

杉田:いいでしょう!

一戸:この景色は観てみたいなぁ

杉田:自分ひとりじゃ行かれないじゃないですか。4人いるから行かれるんですよ!そういうのがアドベンチャーレースならではなんですよ

一戸:女性だと体力で勝てない相手っているじゃないですか。それを地図読みで超えられるのっていいですよね

杉田:それが魅力ですね。体力じゃない、知力、チーム力。中にはケンカするチームもあるんです、何があったか分かりませんが途中で棄権したって聞くことがあるんです。バランスというか体力だけじゃない。
(雑誌を見ながら)ことあるごとにコレを見るんです。最初は全然気づかなかったけど知り合いが写ってたり記事を書いてたりして

一戸:当時は全然知らなかった人が今は友達になってたり

杉田:当時は雲の上の存在だと思ってた人と今はレースに出てたり遊んでたりというのに驚く。
(写真を見ながら)自分でびっくりしたんですよ!この写真見て中学生の自分が喜んでますよ。でもこのとき泣いてるのは感動して泣いてるんじゃなくてカメラを無くして悲しくて泣いてるんです(笑)

一戸:きつかったぁ!やっとゴールできたって泣いてるんじゃないんですか!

杉田:でも写真じゃないですよね、思い出。この経験をいまだに仕事中でも思い出しますね

一戸:5年前から始められたけど、その前は週末には何してたんですか

杉田:大学を卒業してすぐくらいだったから・・・

一戸:やってなかったら何をしてたんでしょうね

杉田:ホントですねぇ、学生のときって明確な目標があるじゃないですか、社会人になると仕事での目標はあるかもしれないけど、私は淡々と仕事をこなすタイプなので、人生を掛けて何かをしたいっていう思い、楽しい趣味をちゃんと見つけたいとずっと思ってた、ずっと探してました。いろんなものを見つつココに落ち着きました。

一戸:(写真を見ながら)こんな所で寝るんですか?

杉田:その辺で、眠いからね。多分みなさんも言うと思うんですけど、ホントにこのレースを通じて出会った人たちが凄過ぎて・・・

一戸:スポーツってスポーツそのものの魅力もあるんだけど、そこにいる人が面白い

杉田:50歳くらいの方にチームを組んでもらってますけど、ハイパフォーマンスで前向き、すごいエネルギーをもらいます。

一戸:学生の頃は社会人になったら友達も増えないし学生時代の友達を大切にしたほうがいいよって言われてたんですけど、スポーツすると年齢も性別もどんな仕事をしてるかも関係なく仲間ができるじゃないですか、その人間関係があったほうがみんな楽しいだろうな

杉田:そうですね

一戸:これは?

杉田:お友達の書道家でデザインもやっている方にお願いして、チームウェアに書いてもらったんです。コレを見て海外の人が声をかけてきてくれる。すぐに日本人って分かるし、英語が苦手だってアピールしてたから事あるごとに声かけてくれて

一戸:コンディションによって途中でルールが変更になったりすることがあるんですよね

杉田:あります。このレースでもありました。

一戸:以前NHKでアドベンチャーレースのすごく過酷なのを観たことあるんですけど、何でみんな泣きながらやってるんだろう、自転車こいでるんだろうと思った記憶があります

杉田:そういう場面もありますね

一戸:最近は企業研修で幹部やマネージャークラスを対象にやってると聞いたんですが、仕事に役立つこととかあるんですか

杉田:仕事に通じるかって視点でレースをしたことがなくて、純粋に好きでやってきたんですが、自然に磨かれる力としては、仕事も必ず誰かと一緒でやりますし、スゴイできる人もいる。特に私は教員なので子供に対してこの言い方はこの子には合ってるけど、こっちの言い方はこの子には合わない、でも違う言い方をしたらすごくできるようになったっていうのがありますね。同じ様にレースを進めていくときもメンバーそれぞれの得意なところを見ることができるようになったかな

一戸:生きるうえでも自然には抗えないから受け流していくとか、無理に戦わない力みたいな受け流す力がつきそうですね

杉田:そうですね。言われてみて気づきました。

一戸:こんな冒険している先生だったらすごく嬉しいですね。私は子供がいるんですけど、仕事だけやってる先生よりいろんなことに挑戦している先生にぜひってお願いしたいですね

杉田:そう言ってもらえると嬉しいですね

一戸:今あるチームでその状況で最大限の力を発揮して目的を達成しようとするから自然と身についているのかもしれませんね

杉田:楽しすぎて仕事と結びつけて考えていないですね、言葉にすればいっぱいあるんでしょうけど。

一戸:次の目標は?

杉田:ワールドチャンピオンシップスの一つに来年も出たいですね。

一戸:同じメンバーで行くんですか?

杉田:メンバーを含めて考えてます。考えるのが楽しいですよね、前例がないほど楽しいですね。知っちゃうと楽しくない

一戸:私は慎重派なのでトライアスロンでも出た人の情報を確認します。逆に日本人が誰も出てない、情報がないっていうのは怖いですね

杉田:私も調べますよ、インターネットでいろんなことを調べるのも面白いですよね

一戸:方向音痴を治したいのでヒントがあるかも、訓練すると方向感覚が身につくとか

杉田:私も迷いますよ、苦手です。英語もそうだけど意外といけちゃいますよ

一戸:何とかなる力が身につくんだなぁ

杉田:今回出たことをいつくかの場で報告させてもらったんですが、自分の生きてきた経過だとか、そのとき思ったこととかをちゃんと思い返すことが多くなった半年だったんですけど、思ったのが自分の人生の意義とか何をしたいとか考えてたとき、私は“あっ!嬉しいな”にいっぱい出会う人生を過ごしたいんだな。アドベンチャーレースを始めたのもチラシ1枚でコレ面白そう、いいなって始めてるし、レースで新しい人と組んでもレース中のふとした瞬間にさらっとかけられた言葉に嬉しくなったり、そういうちょっとした瞬間瞬間の嬉しさに敏感でいたいと思った。その嬉しいなっていうのに常に敏感でいたい。スポーツに限らずどんなときでも。そこが根本にあってやってるんじゃないかな

一戸:レースやっててこんな景色見えて嬉しいなとか仲間にあえて嬉しいなとか

杉田:意外と身近なところにある。今まで突っ走ってきた5年間なので気づいてなかったんですよね。今回の考える機会があって些細な毎日の中に、今日もそうですけどアジサイの小さいつぼみの色がつき始めているのを見て感動して、変化はどこにでもある。それに気づく感受性を大事にしたいですね

一戸:小さい幸せを見つけるみたいなことですよね。それがアドベンチャーレースをきっかけに普段の生活の中でも見つけられるようになった

杉田:見つけられるようになりましたね

一戸:不思議ですね。こんな壮大なところに行って小さいものを見つけられるようになって帰ってくる

杉田:ホントそうですね。くだらないことなんですけど、この間コーヒーゼリーを作ったんですよ。店で売ってるのって美味しいですよね。これって作れるよねって2回失敗して3回目に成功したんです。初めて作ったんですけどスゴイ嬉しい!小学生かって感じなんですけど、やったないことやるのって楽しいですよね!

一戸:アドベンチャーレースの環境って足りないことできないことを挙げるときりがないじゃないですか。でもそれを見ないでコレができる、こんな方法があったとかを見つける力がつくのかな

杉田:確かにそうですね

一戸:女子的には欲しいものばっかりじゃないですか

杉田:たしかに。そういう意味では都会は不便だなと思いますね、レース中は自由だから。

一戸:逆に窮屈になるんですね

杉田:嫌いではないんですけどね。都会でカフェに行くとかも。今はアドベンチャーレースにはまってますけど、やりたいことにもきりがないですよね。私の友達はマニアックな人が多いので、新しいことを始めたいって話すとみんなで教えてくれるんです。多種多様な先輩たちに私が一番下だからお世話になりっぱなしですね

一戸:仕事とのバランスはどうしてるんですか?

杉田:週末は基本的に仕事がないので週末は遊びます。当然、同僚に週末も仕事をしている人がいるけど、私は時間内に必ず終えるようにしています。週末は絶対に出勤しない!って決めてます。

一戸:その分、何も言われない状況を作らないといけないから、効率は上がりますよね。やることはちゃんとやった上で週末は出勤しない。

杉田:夕方練習に行きたいって決めてるときは朝早く出勤したりしますね。

一戸:みんなメンバーを代えて出場することが多いですよね

杉田:みんな仲間なので、コースを作るのも仲間だから手伝う。時には選手で出る。持ちつ持たれつですね。自然にそうなるんですかね。やってる人が少ないので区切れないんでしょうね。みんな遊びたいからクリエーターやるけど、今度はお前な!って順番です。それがいいですよね、お互い。

一戸:どっちも楽しいですか

杉田:どっちも楽しいですよ!この前の奥多摩大会はスタッフでもなく選手でもなく応援で行って、フリーで動いてたんですけど、そのとき見えるものが全然違って、選手のときは自分のチームやその前後しか感じられないけど、全体が見えるしこのチームはココでこんな感じで大変そうだったよ、このチームはココでスゴイ楽しそうだったよとか見えるんですよね。それが楽しいですよね。みんなこんなに1日かけて同じ場所で遊んでそれを共有できるっていいなぁって

一戸:そんな仲間だからメンバーが代わっても楽しい

杉田:みんなよく知ってて、新しく来た人もすごく歓迎するし、他のチームスポーツをしたことがないので分かりませんが、メンバーが代わってもそれはそれで楽しい。またこの人と組みたいなっていうのも当然あるし、いつもと違う一面が見えることもあって面白いですよね、人間味があるというか。私は自分よりハイパフォーマンスの方と組むことが多いんですが、すごくビビるんですよ。迷惑を掛けたらどうしようとか気持ちを伝えるんです。大丈夫だよって言って、フォローの入りとかが神なんですよ、優しいだけじゃなく厳しいけど、必要なときにフォローしてくれる優しさに触れられるのが嬉しいなって思いますね。

一戸:アドベンチャーレースってコミュニケーション能力がすごく身につきそうですね。レース中に自分が思っていることを早めに相談するし、相手の言うことをキチンと聞くとかレースの中で身につきそうですよね

杉田:それは思いますね

一戸:トライアスロンでバイクの練習についていけなかったら迷惑をかけちゃうって気持ちを伝えることもないし、練習が始まるとみんな熱くなって先に行っちゃう。そこがチーム競技でキチンとコミュニケーションをとってやっている一番の違うところかな

杉田:そこでちゃんと耳を貸す人がいい人(笑)

一戸:そうですね(笑)

杉田:それを言った結果、捕らえ方は人それぞれだけど、先に行ってしまう人は今日はそういう練習をしたかったかもしれないし、聞かなきゃ分からないじゃないですか。どういうつもりで来ているか分からないから私は聞くし、心配なことがあれば言いますね。

一戸:それいいですね

杉田:言ったほうがいいし、私はスゴイ聞いちゃいます

一戸:私スゴイ方向音痴なんです。遅いからおいて行かれると道が分からなくなるので・・・って言ってもみんないなくなっちゃうんです(泣)

杉田:その気持ちすごく分かります。悲しいですよね。そういう意味ではアドベンチャーレースの人はみんな絶対において行かないですね。自然すぎて気づかないですけど、ホントにないですね。

一戸:それいいですねぇ

杉田:バイクがパンクでもしたら修理に時間かかるし崖から落ちてるかもしれないから心配ですし、心配して欲しいですよね。特に海の上って何か起こると死ぬ可能性が高い、今回のレースでめちゃめちゃ荒れている海のセクションを二人乗りの舟2艇で進んだんですけど、波が高いから見えなくなるんです。もう1艇がチン(転覆)したんですけど近くだからすぐにレスキューに行けた、目視できた判断できる距離にいるっていうのが常にあるからアドベンチャーレースをやってる人は自然に身についているのかもしれませんね

一戸:いいですね、ハイ!もう1つやりたいことができた(笑)

杉田:あっ思い出した!今日必ず言いたかったことがあるんです。この間アドベンチャーレース繋がりで知り合ったグライダーやってる方に誘われて体験したんです。そのとき感動したのがグライダーは上昇気流がないと上がっていかなくてすぐに降りてしまうんですけど、パイロットが「明日香ちゃん、あそこにある雲まで遊びに行こうか」って言われて、そんな表現があるのか!そんな言葉の使い方があるのかって

一戸:地球で遊んでる感じですね

杉田:スゴーイって感動しちゃいました。今までにないフレーズでした。

一戸:あそこの雲に行って遊ぼうぜ!って

杉田:カッコいいですよね。それを言ったのが65~70歳くらいのお爺ちゃんなんだけど、スゴイなそんな表現ができる、いろんなスポーツやってるとそのスポーツそれぞれの見方があって、それに触れるってすごく好き。その使い方があったか、その日本語の使い方があったかって思わずメモしちゃいました。

一戸:その表現を普通に言えるようになりたいですね

杉田:後日談があって、武井さんと山に行ったんですけど、地図読みできる人は「あの尾根に乗り換えてみる」って表現するんですよ。

一戸:カッコいい!

杉田:普段そんなこと言ってカッコいい!って気づいて、今まで気づいていなかったんですけど雲の話を聞いて考えてみればそんなこと言ってるなって気づいたんですよ

一戸:カッコいい!

杉田:「尾根乗り換えてみる」とか「あの沢を切ってみる」とか。あの沢切るってオリエンテーリングよくあるけど、「2本尾根を乗り換えればあの沢に出られるから」ってトランジションみたいなんですけど、そういうカッコいい表現に出会えたりするからやめられないですよね。グライダーにちょっと乗せてもらっただけでもなんていい言葉がこの世にはあるんだろう。自然に対してそういう見方をしている人がいるって知ることができて嬉しい。って今日は絶対言おうって決めてきました。

一戸:聞いてよかったです。私もメモして帰ります。

杉田:いいこと言うんですよ

一戸:全身で楽しんでますよね、こんなに楽しそうに話する人いないですよね、そんなに楽しいんだぁ

杉田:そんなに楽しいんですよ!

一戸:スゴイ伝わってきました

杉田:カメラをドボンしてから心のシャッターを切るようになったっていうか、自分の細胞全部で今を感じようとするようになりましたから。

アドベンチャーレースを全力で楽しみ、出会った人や言葉から感じる嬉しさを大切にする杉田明日香さん。“あっ!嬉しいな”にいっぱい出会うことが杉田明日香流のLifestyle with Sports

Profile - 杉田 明日香 ASUKA SUGITA

チーム風神雷神のキャプテンとしてアドベンチャーレースワールドツアーに出場。国内では選手としてだけでなく運営にも携わり国内アドベンチャーレースを盛り上げている。

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