なるしまフレンド神宮店で勤務しながら、なるしまフレンドレーシングのエースライダーとしてJプロツアーに参戦。レースなどで得た知識をお客様にフィードバックする小畑郁さんにスポーツとライフスタイルについてインタビューしました

一戸:小畑さんにとっての自転車ロードレースは仕事ですか趣味ですか?

小畑:最初は趣味だったけど自転車いじりが仕事になりましたから、Jプロツアーを走ってるのと仕事との境界が曖昧ですが、ビジネスレーサーのままで今も走っているので、やっぱり仕事と言うより趣味ですね

一戸:今までずっとロードレースは趣味ですか?

小畑:はい。自分は若い時にトレーニングを教わって、群馬で入賞してBR-1クラスに上がって全日本実業団を走ってました。その当時はシマノやミヤタ、愛三工業も強くて、引退する選手が出ると補充でお小遣い程度をもらって研修生みたいに走れるチャンスはあったけど、当時はその先のヨーロッパで走るなんてハードルが高くて踏ん切りがつかなかったんです。仕事しながらでも結構走れたから仕事しながら強いのもいいかなと思ったし、プロっぽく走ることにもそんなに魅力を感じてなかったんです。それに自転車いじりも楽しくなっててそのままこの年まできました。選手として走ってるのは仕事じゃなくて趣味だけど、走って得た知識はお客さんにフィードバックできるし、だから自転車のことばっかり考えて生活してるけど、競技者としてそれが仕事かと言うとそれだけじゃないので

一戸:最初から二本柱というか競技もやってメカニックもやって、それを両立していく

小畑:結果そうなりました。選手としてどうしてもっていうより自転車をいじる、メカの楽しさから入った部分もあるから、それがなければ全然違ったかもしれない。僕らの世代はNHKのツール・ド・フランスを観て面白そうだなってこの世界に入って・・・

一戸:あれを観て自転車ってカッコいいな、やってみたいな・・・

小畑:それですよね

一戸:どちらが先っという訳ではなかったんですね

小畑:中学の頃は陸上やってたから身体を動かすことが好きで、そこに自転車はいじる楽しさもあった。元々何かを作ることが好きでラジコンを作ったりしてたから、そこからくる面白さと身体を動かす面白さの両方ですね。あとは自転車のスピード感にハマりました。大人から始めた人もそうだと思うけど、車に乗っててメカが好きで、自転車のスピード感と合わせてハマった人が多い。ちょっと競争するだけでも面白いし自分で感じられるスピード感をロードレーサーはちょっと乗っただけで思い出させてくれるし、続けていれば強くなれる。いろんな年齢から入ってくるけど、みんなで走ってて○○には負けたくないとか思いながら走ってるとだんだん強くなってますます楽しくなる。忙しくて来られなくなった人が久しぶりに来ると弱くなってるし、それが分かると続けようかなと思う。怪我だけせずに安全に乗れれば楽しめる。自分も仕事をしながら競技をさせてもらってるけど、まだまだ強くなれるし強い先輩たちがいる

一戸:Jプロツアーは仕事しながら走ってる人もいるけど、自転車だけやってる人もたくさんいます。その人たちと一緒に競技をするってことは圧倒的に練習時間が少ないけどジレンマはないんですか?

小畑:それはあるかな。それでもコンディションを整えていけばちゃんと対応できるし、年を取ってくれば思うようにいかなくなることも出てくるけど。30歳前後のいい成績を出せてた頃は、ハイシーズンは仕事も忙しくなるからジレンマはありましたね

一戸:レースも仕事も同時に忙しくなる

小畑:そこが大変かな

一戸:少し前に大ブームがありましたしね

小畑:うまく調整してやってるけど

一戸:限られた時間の中で練習して、自転車だけをしている人よりもいい走りができたりすることがモチベーションになっている

小畑:そうですね。よりうまくやろうとか集中してとか。それがどこまでできるかは分からないけど、Jプロツアーを走ってもどうにもならないなって思ったら考えます

一戸:競技は続けるけど違うステージに進む

小畑:続けたいとは思う、Jプロツアーだけじゃないし。続けてるのは諦めが悪く続けてるだけなので、プロとしてやってたら見切りがつけられたのかも。諦めきれない部分もあるし。成績を出す人は集中している時期があるけど、そこまで集中して乗っていないのかも。いい加減だから嫌になるまで乗ってない。ただ好きで乗っててやめられないか、もしくは嫌になるまで乗ってないか(笑)。乗っていないわけじゃないけど、もう自転車も見たくないと思うほど乗ってないのかな(笑)

一戸:MOTO GPのトップで走っていた方で引退してから10年間はバイクを見るのも嫌だったって話を聞いたことがあります。でも意外と自転車の選手は引退しても乗ってますよね

小畑:世界で活躍した人も乗ってる。好きすぎてまだまだと思ってるのか(笑)

一戸:自転車ってそういうものなのかもしれないですね。藤野さん(なるしまフレンド神宮店の店長で元プロロード選手)はどうだったんですかね

小畑:心が強い人だから、選手としてやりきって監督になった時にきっぱりやめてるのかもしれない

一戸:ロード練習はトラック練習とは違って、今日は江の島まで走ろう!みたいにサイクリングの要素を入れられるじゃないですか。他の競技と違って練習に楽しみポイントを入れられるから乗れるのかも

小畑:それはある。みんなと走っても楽しいし。コミュニケーションを取りながら走れるのも楽しさの一つなのかもしれない

一戸:1週間で仕事と練習にそれぞれどのくらい使っているんですか?

小畑:2日間の休みは週末にレースがなければ水曜に目いっぱい走って木曜は調整して、仕事の日は通勤距離が往復で40km くらいしかないので、帰りは遠回りして1時間くらい走ったり、時々近くの朝練に行ったりしてます。以前はローラー台に結構乗ってたんですけど飽きちゃったので乗らなきゃいけないけど乗ってない

一戸:やっぱり外を走る方がいい

小畑:そうですね

練習しないと強くなれないから面白い

一戸:お店に来る自転車のある生活をしている方を多く見てきて、どう感じますか?

小畑:時間がなくて月に1~2回しか乗れないけど違うパーツに変えたりして機材を楽しむ方もいれば、生活の一部になっていてレースに出たりする方からローラー台に乗った方がいいですか?どんな練習をすればいいですか?などの質問をされたり、いろんな自転車との付き合い方があります

一戸:お客さん同士のコミュニティはありますか?

小畑:クラブチームの他に同時期に始めた人たちがSNSでつながったり、その中でもいろいろと分かれてるようです。年齢も性別もレベルもいろいろですね、全日本選手権を完走するレベルの方もいます。SNSやウェブの情報だけの方もいるので、店に来たり選手と走ったりして正しい情報を得て楽しんでもらいたいですね

一戸:自転車競技は大人になってから始めても上位に入賞できたりするから、始めるのが遅くても決して遅すぎないですよね

小畑:そうですね。ただどの競技もそうですが、努力を続けないと強くなれない。以前はクラブ員に「そんなに練習してないのに何で強いの?」って聞かれることがあったんですけど、そんな簡単なスポーツをやってないでしょ!練習を続けてなくて速いわけないじゃん!練習しないと強くなれないから、それが面白くてやめられない。機材の面白さもあり、いろんな面白さがあるのが自転車です

一戸:自転車をしてなかったら何をしてますか?

小畑:何をしてるかなぁ・・・。想像できないですね。常に自転車のことを考えて生きてきましたから

一戸:自転車をいじっている小畑さんと自転車に乗っている小畑さんと、両方が合わさって小畑さんなんですね

小畑:そうですね。この前のレース会場でも宮澤(崇史)くん(リオモ・ベルマーレ レーシングチーム監督)が直してくれって来たんですよ

一戸:いろんなチームがスーパーメカニックだって頼ってきますよね(笑)

小畑:他にもいるだろうって思うんですけど

一戸:いざという時は小畑さんしかいない

小畑:チームのメカニックはレースのことしか知らないけど、店でやってるといろんなことに対応しなきゃいけないからそこが強みですね

一戸:お客さんの自転車はいろいろですよね

小畑:なので対応する能力はつきましたね

一戸:自分が選手だから選手が欲するものも分かるし、普段は店で一般の方も見ているから、その両方が分かるのがいいんですね

小畑:それで競技にプラスになればいいんだけど、逆にレース前に忙しくなってる気がするので調整しないといけないですね(笑)

一戸:練習をしながら仕事をするのはキツイとかやめたいとか思ったことはないんですか?

小畑:それはないですね。自転車をいじってると幸せっていうのもあるんですが・・・。違う仕事をしてたら行きたくないなぁとかあったかもしれませんね

一戸:自転車愛が深いんですね

小畑:自転車に生活させてもらってます

一戸:自転車に乗らない何もしない日はありますか?

小畑:たまにありますよ

一戸:何してるんですか?

小畑:遅くまで寝たり、ネットサーフィンして・・・、でも自転車のこと調べてますね(笑)

多くの方の協力があってレースが続けられている

一戸:(笑)遠くで日曜日にレースがあっても月曜日は出勤ですか?

小畑:そうですね

一戸:車での移動ですよね

小畑:遠くの場合は飛行機を使います。チームカーで動いている人もいますけど、さすがに厳しいです。有給休暇でレースに出ているので有給休暇が足りない(笑)

一戸:そうですよね、結構レースありますよね(笑)

小畑:無くなっちゃいます(笑)。今年は来週でJプロツアーは最終戦だから残りレースは少ないけど

一戸:大変ですね

小畑:思いのほかちゃんと仕事をしてレースをしてます(笑)

一戸:(笑)会社のジャージを着て走って看板メカニックだから特別待遇なのかと思ってました

小畑:さすがに全日本選手権とか厳しいレースで上位に入ったりすると、この日はいいよって言われることもあります(笑)。でも他のスタッフもいるので基本的にはみんなと同じです。レース数が多いので有給休暇は無くなっちゃいますね

一戸:先日ウルトラランナーの方にお話を伺ったんですけどシリーズ戦はないから出るレースを選んでいるけど、Jプロツアーに出ると年間決まってしまうから、それに合わせて休みを取って行かなきゃいけないですよね

小畑:そうですね

一戸:仕事しながら出るのは大変ですね

小畑:6~7月は毎週末レースになるので

一戸:週末に休みを取れるのは会社も協力してくれている

小畑:そうですね、他のスタッフと重なったら優先してくれています。みんなに走らせてもらってます。前もってレーススケジュールは分かっているので優先して休ませてもらってます。そうじゃなかったら大変ですし続けられないですね

一戸:会社もスタッフも協力してくれているけど、家族もじゃないですか?

小畑:奥さんはとても理解があるので。運転もしてくれるし、レースで補給係もしてくれる。身体のケアもしてくれます

一戸:そのためにスポーツアロマコンディショニングを覚えたんですよね

小畑:すごく助かってます。レースが終わると疲れてしまって翌日はダウンしてます。あとはお客さんにも助けられてて、この日はレースでいないよねって言われながらやってます。今の環境に感謝しながらやらないといけないですね

一戸:週末が休みの人が多いから、店に行っても小畑さんがいないってことですよね

小畑:そうです

いろんな機材を試して最適解を求めている

一戸:これから叶えたい夢や目標、やりたいことは何ですか?

小畑:Jプロツアーを走り続けるチャレンジはしたいし、全日本選手権やツール・ド・沖縄にも。ただレースが違うのでJプロツアーに合わせると沖縄はなかなかうまく走れない。先月も高岡君は月間3,000kmも走ってるけど、僕は頑張って2,000kmですから。国際レースをずっと走ってて、市民レースに移ってすぐに自分がアシストした岩島君が勝ったから、いつでも勝てるかなって思ったけどなかなか勝てなかった。年も取ってきたしチャンスがあれば今年こそはとは思っているし成績も欲しい部分はあるけど、どうしても勝ちたくてやってないのかもしれない(笑)。難しいですね。藤野さんは勝ちたくてやってた、レースで勝って勝つ喜びを知って追求していった人と自転車が楽しくていじるのが楽しくて続けてる自分との違いですよね

一戸:レースをしているのが楽しい?

小畑:そうですね、なりふり構わずどうしても勝ちたいかっていうと・・・ていうところで、勝つ気がないわけじゃないけど、そこが自分でも分からないところでもあるんです

一戸:ホビーレーサーなら出ることが楽しい人はたくさんいるけど、トップリーグを戦っている人でどうしても勝ちたいのは違うっていうのは不思議ですね

小畑:負け慣れてて目標が見出せないのかもしれない(笑)。ただ準備してきたことが正しかったのかは知りたい

一戸:準備したことの結果をフィードバックして次のレースの準備をして、それを結果につなげる。この繰り返しが楽しいのかもしれませんね

小畑:そうかもしれませんね

一戸:自転車のパーツをこれかなって変えてみたら違った・・・。じゃあこっちかなみたいな

小畑:そうですね。自分は機材を決められていないのでレースによってフレームも違うから、このレースでこの展開ならこのフレームとホイールにしようとかもやります。でもそのチョイスが良かったか、それは十分に準備ができての結果なのか。仮に十分な準備はできなかったとしても、その中で最善を尽くすチャレンジはし続けているつもりです

一戸:自分との戦いですね

小畑:そうですね、でも他人と競っているので少しでもいい成績を上げようともしていますけど

一戸:いろんな機材で走れるのはお客さんにとってもメリットですよね

小畑:そうですね、それに合わせて引き出しが増えるのは真剣に乗っていることによるメリットですね

一戸:アグレッシブデザインを使っているのは?

小畑:昔から暑さに弱かったんです。多分日中の暑い時間に練習する時間が短いから。毎日乗ってるけど朝練か夜練だから、何年か前まであった播磨の残暑厳しいレースはたいがい熱中症になって帰ってきていました。今でも基本的には日焼けしたいんですけど、対策をするようにしてレース直前やレース中は必ず使って疲労がないようにしてます。特に暑いレースは必ず使います

一戸:Jプロツアーも一番暑い時間にやるじゃないですか

小畑:だから効果をすごく感じています。今年の全日本選手権(益田)もあの暑さだから対策をしなかったら普通にDNFになってます。我慢のレースしかできませんでしたけど、すごく効果がありました。

一戸:なるしまフレンドでも売ってますよね

小畑:女性の方の評価も高いですよね。効果を考えると安いし

一戸:男性と女性では使う目的がちょっと違いますけど

小畑:自分は擦過傷の痕に絆創膏を貼るのも嫌だしサージカルテープを貼るのも色素沈着しちゃうし、ある程度治っていれば攻撃性もないし日焼けしちゃうと治りが悪くなるから、気にして塗ってます。塗っておけば治りが早い気がします

一戸:私はこれ(ファイター)のおかげでレーパンが履けるようになりました。女性はレーパン焼けしたくないので

小畑:女の人はそうですよね、男の人は気にしないけど

一戸:男性は黒くなることで日焼け対策になると思ってるけど、効果はほとんどないんですよね

小畑:そうなんです!

一戸:ヒリヒリしたりする痛みに慣れるだけで熱対策になったり日焼け対策になっているわけじゃない

小畑:そうなんですよね

一戸:黒くなってもSPF4程度の日焼け止めを塗ってるのと同じですからね

小畑:自転車乗りは見た目重視ですからね

一戸:自転車に乗る方は焼けてる方がカッコいい。レーパン・靴下焼けしてると乗ってます感がでるから

小畑:ウェアがメッシュで完全に焼けるじゃないですか。全身に塗らないといけないですよね

一戸:そうですね

小畑:背中とか

一戸:ランナーは全身塗ってる方が増えてますね。肩から背中にかけて結構焼けるから

小畑:肩は焼けますよね

一戸:トライアスロンでもバイクセクションで肩から肩甲骨辺りがよく焼けます

小畑:まだお客さんは焼く人が多い、あんまり気にしてないかな。最近は夏でも長袖来たりして完全ガードしている男の人も増えてきたけど

一戸:汗で流れない日焼け止めがあるなんて考えないから着るしかないですよね

自転車は面白いし、いいスポーツだと思うからもっと広めたい

一戸:最後に自転車をやってて良かったことは?

小畑:元々は自転車のことしか考えてこなかったけど、奥さんをはじめ自転車がなかったら出会えなかったいろんな人と出会えて、公言しているかは別として自転車好きの文化人やトレーニングに取り入れているスポーツ選手とも知り合えて一緒に楽しめる。自転車がなかったら自分の人生どうなってたか分からないなぁ。そういう意味では自転車に感謝してます

一戸:本当に好きなものに出会えた

小畑:それはありますね

一戸:長い間自転車に関わってきて、新たにやりたいことはありますか?

小畑:ここまで自転車に関わってきたので、自転車に関する何かにアプローチしていかないといけない。海外に行けば自転車が文化として根付いているし、日本でも自転車の地位を向上していきたい。自転車は面白いし、いいスポーツだと思うからもっと広めたいですね。楽しくて安全な生涯スポーツにしていきたいし、人が増えれば環境も変わるかもしれない。そのために何かできればいいなと思ってます

一戸:ありがとうございました

自転車に関わる全てを楽しむ小畑郁さん。大好きな自転車をとことんまで続けることが小畑郁流のLIFESTYLE with SPORTS

Profile - 小畑 郁

なるしまフレンド神宮店で勤務しながら、なるしまフレンドレーシングのエースライダーとしてJプロツアーに参戦。レースなどで得た知識をお客様にフィードバックしている

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