本日はニュートラルサービスでお馴染みのアメアスポーツジャパン(株) MAVICの村上嘉之さんにスポーツとライフスタイルについてインタビューしました。

一戸:以前から村上さんのことは知っていましたが村上さん自身のことをお聞きするのは初めてですね。自転車を始めたキッカケって何だったんですか?

村上:小学校5年くらいのときにNHKでツール・ド・フランスを観て、自転車競技スゲェー!こんなスポーツがあるんやぁ!それで自転車競技を知って、それからちょうど1年後くらいにドロップハンドルの自転車を親戚のお兄ちゃんにもらったんです。ブリヂストンサイクルのロードマンって言うツーリング自転車だったんですが、それに乗って大阪から京都まで友達とツーリングに行くようになったのが自転車のスタートです。

一戸:なんか男子っぽいですね

村上:男子っぽいでしょ。

一戸:遠くに行っちゃうみたいな。

村上:そう、遠くへ行く。でもその頃にはツール・ド・フランスがやってたことなんてすっかり忘れてるんですよ。とにかくツーリングで遠くへ行きたい、家から離れたい。

一戸:冒険する道具みたい。

村上:冒険する道具でしたね。とにかく週末になると友達と京都まで走る。2そのうち何が起こるかって言うと京都まで誰が一番速く走れるかになるわけですよ

一戸:男子だなぁ(笑)

村上:そう

一戸:発想が男子だなぁ(笑)

村上:そうなんですよ。そのうち坂を誰が一番速く上るかになるんですよ、京都行くにしても。そうやって乗ってたのが小学校6年のときです。でも中学になると自転車のことは完全に忘れてましたね。

一戸:じゃあ、結構時間が空いちゃうんですね

村上:時間が空きますね。元々小学校のときから水泳をやっていたので中学も水泳の選手をやってました。大阪の南河内の大会で優勝したりしてたんですよ、まぁ体力はあったんです。だから水泳をやっていて自転車のことは完全に忘れてましたね。でも水泳をやってた仲間たちはそれなりに水泳の強い高校へ行ったんですけど、僕が入った高校にはプールが無かったんです。

一戸:そこまで水泳やってきたのに?

村上:そう、でも学校にプールが無いんですよ。そこそこ泳げるのに(笑)。友達は近大付属とか強い高校へ入るんです。その頃は近大かイトマンかってくらい強くて、水泳やっていたにもかかわらず、高校にプールがない(笑)。そこには自転車競技部があったんですよ。

一戸:へぇー。でも自転車競技部ってどこの学校にでもあるってわけじゃないですよね。

村上:そうでね。

一戸:無いですよね、当時は

村上:当時は無いですね。僕の行ってた学校は阪南大学高等学校って言って前は大鉄(ダイテツ)って言う高校だったんですが、世界の盗塁王、阪急の福本がいた野球部が強くて春の甲子園準優勝1回とか、自転車競技部も強くて全国大会で活躍してました。そのときに忘れてた小学校5年のときのツール・ド・フランスを思い出し、小学校のときに京都まで走ったし自転車競技をやろう。モータースポーツが好きで機械をいじるのが好きで自転車がいじれるし。

一戸:エンジンが自分になるわけだけど

村上:そうそう。それで始めたのが自転車競技のスタート

一戸:じゃぁ自転車競技を始めたのは高校1年のとき

村上:そう、当時、自転車競技の人口ってそんなに多くないから、走ると新人戦などで入賞してしまうんですね。俺、強いんちゃう!って思ってしまうんですよ。山に登っても水泳をずっとやってて心肺機能は強いから、あれ?俺って全国獲れる?って

一戸:(笑) どのくらいまでいったんですか?

村上:インターハイ、国体出場(社会人)までですね

一戸:すごいですね

村上:そんなことないですよ。みんなは世界選とかオリンピックとか目指してトレーニングしてるのに自分はまずインターハイに出るためにトレーニングしてたから練習量が足りてないんです。元々大阪には何人かオリンピック選手がいたんです。その人たちを見ていると(自分は)目標設定が低かったって今になって分かりましたね。そのとき理解してたらもう少し違う結果になってたかもしれませんね(笑)

一戸:もっと上へ行けた?

村上:高校1年から自転車競技を始めて3年でインターハイに出場できたんですが、最後の目標だった国体には出られませんでした。で、高校卒業して自転車競技をやめようかと思ったんですけど、就職活動してなかったから就職先が決まらない状態で毎月レースはあるから出場してたんです。それなりにレースを走ってるとそれなりに走れるんですよ。

一戸:その段階で練習はそんなにやらなくなったんですか?

村上:卒業するので8月くらいから一時パッタリと自転車に乗らなくなったんですが、レースだけは誘われるから出る。で、それなりに走れてしまう。10月末にある近畿ロードって関西で一番大きい登録選手が出るシーズン最後のレースがあるんです。結局そこまで走ってました。そうしたら城東輪業って老舗の問屋さんから声が掛かったんですよ。自転車競技を続けていいって話で会社のお金で遠征させたるから。そうして城東輪業に入って25歳まで自転車競技を続けたんです。

一戸:実業団選手ってことですか?

村上:そうです。だから所属した会社にフルタイムで働いて給料と遠征費をもらって25歳までレース活動を続けた。

一戸:ジャージには会社名が入ってて

村上:そう、入ってました。同じ会社にも龍谷大学でインカレ入賞した人とか国体入賞した後輩とか4人くらいで活動してて、地元のなみはや国体に出るまで走ろうって続けました。

一戸:じゃあ、なみはや国体に出られた

村上:24歳のときに都道府県トラックと25歳のときのなみはや国体に出られて自転車競技をやめました。

一戸:ちゃんと決めてた目標はクリアできたんですね

村上:たまたま当時アラヤで走っていた園田さんに声を掛けてもらい出場が叶いました。城東輪業で25歳までの間はいろいろありましたね、今マトリックスの監督をやっている安原大先輩には面倒みてもらって一緒に練習させてもらったし、オリンピックに出場した三浦恭資さんが近所に住んでて毎週土日の朝8時に自宅へ行って三浦さんと一緒にロード練習へ行く。毎週オリンピック選手と一緒に練習してたらそれなりに走れるようになる。バンクへ行くと安原さんが走ってる。あの人が「バイクペーサーやるぞ」って言うと一緒にバイクペーサーをやらせてもらう。先輩たちのお陰で素晴らしい環境で練習ができてましたね。

一戸:オリンピックに出ようとかでもなく何で練習を続けようと思ったんですか?自転車に乗るのが純粋に楽しかったんですか?

村上:元々、小学校5年のときから遠くに出かけるのは好きだったからすごく楽しくて、だからどっちかって言うと自転車競技で競争するよりロングを楽しく走りたいっていうのが根底にあるのでオリンピックで勝ちたいとか速くなりたいっていうよりも何かの道具を使って遠くへ行きたかったんですね。

一戸:レースだったらクリテリウムよりラインレースみたいに遠くまで走れるほうが楽しい?

村上:またいい質問ですねぇ。僕はどっちかって言うとクリテリウムのほうが好きだったんですよ。トラック競技をずっとやってたんで4000m速度競争って単発なレース、中距離なんですよ。身体が大きいから山は登れないけど安原大先輩に鍛えられた平地のスピードはそれなりにある。そうするとクリテリウムみたいに短い距離は身体が大きいから立ち上がりも速いし、そっちのほうが得意だったんです。例えばコースで言えば鈴鹿サーキットの正回りみたいな感じですよね。

一戸:へぇ~、想像できないなぁ

村上:ただラインレースとか山を登ったりとかになるとキツイんで、全日本選手権ロードが修善寺であったんですが、DNFでしたね。

一戸:コースがキツイですもんね

村上:本来練習してたらキツイなんて言ったらダメなんですけど、そのときは先入観があって自分はクリテリウムみたいな平地だったりポイントレースや速度競争しか入賞経験がなかったんで、当時は180kmくらいだったかな全日本で。しかも5kmコースしか使ってなくて

一戸:へぇー、あそこで180kmも走るんですかぁ

村上:元々得意じゃないから、大阪から乗合で行くんですよ、多分DNFだろうと思いながら(笑)。修善寺~大阪間のドライバーです。逆に言うと去年のフランスであったエタップ・デュ・ツールって長いファンライドイベントに出てますけど、そこ行くまでのトレーニングって5月だけで2000km乗るって言うのは・・・

一戸:去年、かなり練習してましたよね

村上:練習しましたねぇ。佐渡210km走るイベントの前日に75km走って獲得標高2000mとか。翌日210km走んの分かってんのに乗りに行ったりとか、去年ご一緒させてもらったあづみの(アルプスあづみのセンチュリーライド)も160km走る前日に美ヶ原ヒルクライムコースを登ってきたんですよ。あれで100kmくらいで獲得標高2400~2500m。それで次の日に一緒に走ったじゃないですか。ああいう風にマイペースでロングを走るのが元々好きなタイプなんで

一戸:好きなことに戻ってきた

村上:そうですね。競争って言うよりどっちかっていうと2~3人か1人で行きたいところに自分のペースで走るって言うのが多分リラックスできる時間、楽しめる時間かな。

一戸:あづみののときも一緒に走らせていただいて、あづみのっていろんなところにエイドがあって美味しいもの出しますよっていうファンライドイベントじゃないですか。なのに補給食持って「はい、ノンストップで行くぞ!」って出て行って、途中に景色がきれいなところでみんな止まって写真撮っているんですけど、チーム村上は全く止まらず最後まで走る。ストイックだなぁと思って

村上:レースではないけども自分がどこまで長い距離走れるかっていうのがあるのかな。

一戸:まぁ、あとはエタップに向けてっていうのがあったのかな

村上:それもありましたね。エタップに向けてってのがね。チョット笑い話でMAVICチームのオフサイドミーティングしたときに伊豆大島に行ったんですよ。あそこバームクーヘン道路ってあるじゃないですか、有名な観光スポットになってる。みんなでそこで写真を撮るぞって言ってたんですけど、MAVICチーム誰も止まらへんで誰も写真撮ってないんですよ(笑)

一戸:(笑)

村上:宿にゴールしてから晩御飯食べてるときに全員でバームクーヘン道路ってどこだったの?って話になったんです

一戸:走り始めちゃったら全然気にしてもいないっていうか気づかないまま走っちゃんったんですね

村上:その道路のロケーションがすごい気持ちいいところで、後々考えたらそんときは早川と2人で後にみんなを引き連れてたときで、全員があまりにも気持ちよくてテンション上がりすぎて、いいローテーションが回ってたみたいなんです。(笑)

一戸:(笑) 何かゾーンに入ったみたいですね、完全に

村上:っていうのが僕らの自転車ライフ。でそれがずーっと45~46歳になるまでなぜか続いている。

一戸:なんか最近早川さんが結構いろんなイベントで走ってますよね

村上:いい質問ですねぇ。今年は早川がエタップに行くんですよ

一戸:だからかぁ!妙に走ってるなぁって思ってたんです。7時間エンデューロを1人で走ってたりとか。どおりで距離乗ってるなぁって思ってたんですよ

村上:ホントはキッカケがあれば、多分僕も含めて自転車が大好きで乗ってるんで乗り続けると思うんですよ。それがたまたまいろんな問題があって自転車に乗れなくなったり、僕の場合はもう子育てが終わってますけど、うちの松村とかは子育てがあったり。自転車ってやっぱり乗ると5時間くらい戻って来れないんで

一戸:そうなんですよね

村上:これがランニングとちょっと違うとこかな

一戸:ちょっと1時間って感じじゃない

村上:そうなんですよね。それが自転車から離れる理由の一つかなぁって思うんですけど、僕がフルタイムワーカーで働きながら走ってたときって、早朝から練習に行って距離を走ってから会社に出勤したりもしましたが、その癖が今でも残ってるんで会社の出勤時間も早いんですけど。それができればもうちょっと自転車に乗れるんですけど、ただ仕事があって家庭があって5時間の枠はなかなか取れる人が少ないのが現実ですね。そこが何とかできればもっとサイクル人口が増えるんですけどね。ただ自転車の醍醐味は5時間、10時間乗ってゾーンに入る。それが楽しみの一つかもしれへんから、まぁ実際1時間だけ乗って楽しいかって言ったら・・・

一戸:特にみなさん会社が遠いし、住んでるところも都内や近郊だったりすると特に関東は1時間だと途中信号があったりだとかいいところに出るまでに1時間とかかかっちゃったりするじゃないですか。それがなかなか難しいですよね

村上:そうなんですよ。結局あづみので足をつかずに(※一時停止や信号は止まります)走ってしまってエイドステーションに寄らないっていうのは元々ヨーロッパ、エタップ・デュ・ツールって3日前くらいから入るんですけど、観光も兼ねて1回も足をつかずに行きたいところまで行ける、ヨーロッパって全然信号が無いからほぼ停まらないんです、1時間でも。だから1時間だけ走って出勤するって言っても日本より満足度は高いと思います。でも日本の場合1時間走っても信号待ちの時間のほうが長くって、いいテンションになる、くるくる気持ち良く足が回るってときにはもう信号。

一戸:ストップ&ゴーみたいになる

村上:その繰り返しがあるんで多分1時間じゃ納得できない。だからやっぱり5時間くらいかかる。そこをうまくできたらなぁって思います。キッカケがあるとね、エタップに出るぞとかね、あづみのを完走するぞとかなると、それに向かって逆算してプログラムが組めるんですけど。

一戸:アメアスポーツの方って忙しくなってパッタリ運動しなくなる時期があっても突然誰かがポッと目覚めて運動しだして、中根さんがトライアスロンを始めたりとか。そんな感じでスポーツし始めて自転車の楽しさを思い出すサイクルがあるような気がします。エタップに限らずそんな感じで思い出すって言うか目覚めてる感じですよね

村上:そうですね。基本、MAVICのみならず他のブランドもですけど、やっぱりスキーが大好きでサロモンに入りましたって言っても土日がイベントだったりして滑れないんですよね。だから部署が変わったりとかのタイミングで時間が見つかるとスキーに行ったりとか、MAVICも人によって忙しい時期が違うので、それぞれが上手くプログラムを組んでそれに向かってトレーニングを始めて、一人がやるとみんなそれに追従してく、負けず嫌いなんです。

一戸:同じ会社の中でうまいコミュニティが生まれる。去年か一昨年に獲得標高いくついきます宣言ってありましたよね

村上:やってます。SUUNTOの時計を使って年間獲得標高とかマンスリーの獲得標高が出るんで、それを指標にしたりとか。あとはチームだとチームマイナス5kg、体重を5kg落とそうって目標設定があって。実はそれって毎年やってるんですよ。

一戸:それって毎年達成し続けたらガリガリになってっちゃうってこと?

村上:いい質問ですねぇ。達成した瞬間から暴飲暴食の年末が始まってまたすぐに戻るんですよ。

一戸:その繰り返しなんですね

村上:去年のエタップ前に実は僕はマイナス5kgにならなかったんですよ。3kgくらい絞れたんですけどトレーニングしすぎて筋肉がついてしまって体重が落ちなくなったんですよ。身体絞れたから体重落ちたかなって体重計に乗っても落ちないんですよ。でもエタプは気持ちよく走れた。ただその後ですよ、忘年会で年末に暴飲暴食したら元より太りました。

一戸:年間通してストイックである必要はなくて、やるときはやる、休むときは休むってオンオフがあるんですね

村上:そうですね。例えばこの間もチームのメンバーとキャンプに行ったり、バイクツーリングに行ったり、車のイベントに行ったりとか、選手をやめてからみんな多趣味になって年がら年中自転車に乗ってたライフスタイルからプラスアルファ広がっていくようになりましたね。みんな大型バイク免許を持ってるからバイクツーリングに行ったりするんで、合間を見てスケジュール組んで自転車に乗ってる。冬はロードからMTBに乗り換えてチーム全員で乗りに行ったりしてます

一戸:この前もキャンプに行ってましたよね

村上:あれは焼酎を飲むキャンプです。屋久島であったライドイベントでいろんな方から屋久島の焼酎をいただき、それを飲むためにみんなでバーベキューしようぜ!ってことでキャンプしたんです。

一戸:確かにみんな多趣味ですよね、村上さんは特に

村上:そうですね。だから最近自転車に乗る時間が少なくなってます。

一戸:みなさん平日はオフィスで週末はイベント行ってとても忙しいと思うんですけど、趣味の時間を作るコツってあるんですか?

村上:幸せなのは自分がしたいことをしてここまで来たので、例えば来週から始まるツアー・オブ・ジャパンって大きなイベントがあるんですが、我々ニュートラルサービスを古くからやってますが、みんな口には出さないけど行きたいんです。ツアー・オブ・ジャパンとかジャパンカップとか、ツール・ド・北海道とか行くとみんな普段の仕事よりイキイキしてますね、レース現場のほうが。

一戸:現場は楽しいですもんね

村上:そうやって仕事と趣味のバランスを取ってるんで、質問の答えとしてはここに所属してる時点で仕事が趣味になってるような気がします。

一戸:村上さんは元々自転車競技をやってて、今やってるニュートラルサービスは自分の経験を活かしていると思うのですが

村上:元々自転車競技をする前は車が好きでモノをいじるのが好きだったんで、ラジコンいじっててバイクになり車になり自転車になった、いわゆる手先の器用さや車好きがニュートラルサービスに活かされてますね。ジャパンカップとか熊野の千枚田の下りとかこの前のツール・ド・とちぎの狭い下りとか、日本の道は非常に狭いのでテクニックが必要なんですね。自転車の動きが分かる人がドライビングするのがベストなんですね。でも自転車の動きが分かってても運転が上手くないと危険なんで両方が必要なんです。自転車競技と自転車の動きが分かってて車の挙動を知ってる人がハンドルを握るのが一番安全。特に日本の場合は。ヨーロッパみたいに広くないんで。千枚田とか非常に狭いです車1台半くらいの幅で、僕は1回そこで13人抜いていったんです。

一戸:えー

村上:コミッセールに呼ばれるんですよ、早くMAVIC来いって。

一戸:そうだ、呼び出されるんですね

村上:呼び出されたけど、今、千枚田で13人の集団がいてるんやけどなぁ。前の集団に来いって言われると行かないといけないので、そのときはたまたまよく知ってるベテラン選手がいて若い選手と逃げてる集団だったんです。クラクション鳴らして長年この競技をやってるからベテラン選手に声をかけて「前に行きたい、ここで前に行きたい」って言ったら若手の選手に声をかけてくれてコースを開けてくれたんです。そういうコミュニケーションが取れるのは一緒に競技をやってた強みでもあるし、今はプロで走ってるほとんどの若い選手が小学校や中学校から知ってる子達だから分かりやすいですし、一言ベテランに声をかけてニュートラルをハンドリングさせてもらったりもできるんです

一戸:自転車競技の動きが分かってないと選手からすると挙動が怖い、危ないとかになるけど、村上さんなら信頼関係ができてるからお互いに分かる。

村上:極端に言えばバイクだとメイン集団と一緒に入っていきます。1台の自転車と同じ状態です。そういう意味では安全に走れます。ベテラン選手になればなるほどコミッセールが誰かを把握しているのでこの人なら大丈夫だって判断してますね。ただ外国人が入る国際レースだと阿吽の呼吸がきかないし海外ルールと国内ルールの若干の違いがありますね。ただMAVICのニュートラルサービスは本国の情報ももらってコミュニケーションを取りながら日本のローカルに合わせてやってますから問題は起こってないですね。

一戸:MAVICカーは普段から見慣れてる存在だから尚更ですよね

村上:MAVICカーは元々1台しかなかったんですけど最終的には4台にしてレースをMAVICだけでやりたいんですよね。

一戸:増えました?

村上:今は3台あります。で、チョット脱線するんですけどMAVICモトが今は2台あるんですけど、あのMAVICモトを入れるために僕は大型バイクの免許を取り大型バイクを買い、2年間レースにコミッセールとして入ってトレーニングしたんですよ。そのとき2級審判を取り審判として日本全国で年間40レースくらいこなしてました、モトコミッセールで。そのときの持ち出し金額がそれなりに・・・。オイル交換だとかタイヤが2セットとか。で、そうやってまず審判側に入って同じ目線になって実はMAVICでニュートラルモトを入れたいんやけどって話をもっていったんです。それでMAVICモトをツアー・オブ・ジャパンでデビューさせたんです。急にニュートラルバイク入れさせてくれって言っても信頼関係がないと審判側からもNGが出る。

一戸:あれは今や一般の自転車が好きなライダーにも例えばあづみのにMAVICモトが行っても喜ばれてますよね。私の友人も去年のあづみのでパンクしてMAVICモトに助けてもらったってすごい自慢するんです。普段プロのレースで観てるMAVICモトに自分が助けてもらった、自分のタイヤ交換してもらった写真撮ったり。

村上:それは我々にとってはすごく嬉しいことですよね。我々が競技をやってた頃はそういうのが無かった時代で96年からニュートラルサービスを始めて、それをヨーロッパスタイルにしたい、どんどん近づけていきたいと思ってやってる中でそのような声が上がるとスタッフは社員が多いので励みになりますよね。

一戸:この対談を読んでる方はほとんどが普段仕事も持っていて趣味でスポーツをしててプロのアスリートじゃない方が多いのですが、スポーツのあるライフスタイルをこんな風に楽しんで欲しいといったメッセージはありますか?

村上:どんなスポーツでもそんなに高い目標を持つ必要はないけど一つの目標を持ってそれに対して楽しみながらその目標を達成できるように組み立てていってくれたらいいんじゃないかなって思うんですけど

一戸:エタップはやり過ぎにしても・・・

村上:エタップはやり過ぎです

一戸:この大会に出て完走したいとか、トレイルの大会でこのくらいのタイムで走りたいとか

村上:例えばトレランの大会にしても30km、15km、5kmとかあって5kmが悪いのかじゃなくて5kmでもいいから完走するためにプログラムを組んで、朝いつもより30分早く起きて1km走る、次の日1.5km走る、土日に1回5km走ってみる、そうやって5kmの大会に参加してみるっていうのを積み重ねていくと次に5kmが10kmになり15kmになる。多分サイクルイベントもあづみのも160kmと100kmとトレインっていう80kmくらいの片道走って電車で帰ってくるのがあって一般の人の80kmってスゴイことですよね

一戸:初心者が80kmって聞いたらビックリしますよね

村上:それを朝ちょっと早く起きて今日は会社まで10km往復20kmをやって週末に1回50km走ってみるとか、まず目的をひとつ決めるとそれがモチベーションになって動けるのかな。そうやってスポーツを楽しんでもらいたいですね

一戸:前にスカイランナーの岩楯さんと対談させてもらって岩楯さんも遅くても初心者でもみんな楽しくやってもらいたいって話を聞いてスカイランニング楽しそうだなって思って。スカイランニングって調べると距離1km獲得標高が700mとか1kmって感じなんですけど、1kmでいいならいけるかな。遅い人からスタートするんですよ、遅くても全然いいんですよ、そういう感じなら面白そうだからやってみようかな。そうすると普段のランニングでスルーしてた階段があるんですけど、よし階段行くか!って楽しくなるんです。小さめな目標でも楽しくなるかもしれませんよね

村上:小さい目標設定と楽しむことだと思います。プロだと勝ったか負けたかで楽しいとか楽しくないとかじゃなくて生活かかってますけど、フルタイムワーカーが趣味でやってるスポーツであれば、まずは楽しむことが大事ですけど楽しむためには目標がいるんじゃないかなって思います。それは5kmでも1kmでも目標を作って寄り道するのが一番楽しいんじゃないですかね

一戸:エタップに向けても練習は楽しかったですか?

村上:世界アマチュアイベントで苦しいイベントトップ10に入るって聞いてたんですけど、そこまでハードではなくて、ただ目標を誤らなければ楽しく走れます。元々坂が嫌いでクリテリウムの平地短距離が好きだと言ってたのに210km走る佐渡の前に75kmで獲得標高2000mとか美ヶ原を走りに行ったり、エタップの目標設定が獲得標高4000mとすると美ヶ原で2000mだからこの倍かと思うと逆に楽しく思えてくる

一戸:へー、楽しくなるんですねぇ

村上:初めから美ヶ原に上ったとか佐渡金山をいきなり上りに行ったわけじゃなくて、まず近所の飯能の方の800mくらいの峠から始まって、少しずつ距離を伸ばして都民の森まで行く柳沢峠まで行く。それは元々競技をやっていたんで急に柳沢峠に行こうじゃなくて順番に距離を伸ばしていったんで身体が順応していくからどんどん楽しくなってくるんです。それには目標ですよ、いつまでに都民の森まで気持ちよく走れるようになろう、そのためには飯能の800mの峠を今週、来週上ろうとかって逆算していくスタイルでいくと最後にはエタップがそんなに苦しくなかった。

一戸:エタップの次の目標はあるんですか?Haute Route(オートルート)は?

村上:エタップもそうですがオートルートってロングライドプロってのがいてるんです。

一戸:エタップに勝ちに来てる人がいるんですよね

村上:勝ち負けっていうよりもエタップのロングライドプロって言うのは参加して好成績を出すことによってメーカーからスポンサーフィーをもらってるんですね。うちにもニコラ・ルーってのがいて元プロなんですよ。日本で言うと三船さんみたいな人ですよ、元プロで走ってて今はロング走ってますよね、あれで生計立てて。あれだけじゃないんですけどそういう人がヨーロッパで沢山いてるんですよ、彼らが走って使った機材をメーカーがPRする。メーカーに所属してたりプロとして活動してる人がいてる。オートルートはそういう人たちの集まりっぽいイベントなんです。それはチョット・・・

一戸:誰かがオートルートへ行ったらいいなぁと思って

村上:女子も出れますよ

一戸:絶対無理です

村上:確か女子を入れるパックのはずですよ。確か入れなあかんかったんちゃうかな

一戸:へー

村上:チャンスですよ

一戸:チームでDNSかも(笑)。次の目標はなんですか?

村上:次はマウンテンバイクでカナダを走りたいなと思ってます。ウィスラーの方とか、結構世界的にはマウンテンバイクは熱いので、ロードのトライアスロンもだけど世界的にはマウンテンバイクですし、スペインに面白いコースもあるし、もう少しこの仕事をしているんだからマウンテンバイクも世界を観たいなと思ってます。レースじゃなくてゴンドラで登って下りを楽しむとか

一戸:景色を楽しむとか

村上:でも景色観ないんでしょうね

一戸:そのまま行っちゃう

村上:ここどうやって飛ぼうかなとか思って(笑)

エタップ・デュ・ツールの後はマウンテンバイクで世界を観る目標を立てる村上嘉之さん。目標を持ちその目標を達成できるようにプログラムを組み立てて、それを本気で楽しむ。それが村上嘉之流のLifestyle with Sports

Profile - 村上 嘉之 Yoshiyuki Murakami

アメアスポーツジャパン(株)MAVICフィールドセールスマネージャー。自身の自転車競技経験を活かしニュートラルモトMAVICを導入するなど新たなチャレンジを続ける自他共に認める趣味人

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