SKIN UPの考え方に共感 広尾プライム皮膚科 院長谷祐子先生
皮膚科医が語る紫外線対策
健康で美しくありながら楽しい毎日を過ごす
生活スタイルに合わせたスキンケア方法を大切にする谷先生が
自身の体験を交えながら紫外線への対策について語ってくださいました
ゲスト
谷 祐子 先生
広尾プライム皮膚科 院長
1993年広島大学医学部卒業、大学病院にて形成外科、整形外科、都内美容皮膚科を経て、2009年より広尾プライム皮膚科勤務。
医学博士、ドイツ医師免許(Approbation in Deutschland)、日本形成外科学会専門医、日本美容外科学会(JSAPS)会員、日本医学脱毛学会会員、日本メソセラピー研究会役員、ドイツメソセラピー協会会員
インタビュアー
橋本ワコ
アスリート・スキンケア・アドバイザー
10年前よりランニングを始めたことから、パフォーマンスだけでなく、「スポーツする姿も美しく」を、waco流「スポーツビューティ」のモットーとし、スキンケア、メイクアップ、ウェアコーディネート、3つの柱で構成される、独自の「スポーツビューティ」を提唱中。
患者に対して
紫外線対策の提案
- ワコ
- 谷先生はランニングをされているんですよね?
- Dr.谷
- はい。何か身体を動かすことをやろうかなって思って6年前からランニングを始めました。でもなるべく日焼けしないように気をつけています。
- ワコ
- 走るようになってから何か変わりましたか?
- Dr.谷
- ランニングをするようになって自律神経のバランスが良くなったと感じています。精神的にも身体的にも安定して疲れにくくなりました。朝ランのコミュニティ(GMRC:Good Morning Run Club /Culture)に参加することで、一緒に走るの仲間が増えて、そこでもスキンケアや紫外線ケアの大切さを話したりしています。
メラニンのアンバランス
- Dr.谷
- 子供の頃って夏にプールに行ってみんな真っ黒になるか真っ赤になるか、日焼けして9月1日を迎えるけど10~11月にはだいたい元の肌の色に戻って冬になると何事もなかったようになりますよね。それなりに白くなってまた春を迎えるサイクルですが、大人の場合はどこか特定の部位のメラノサイト(メラニンを作る細胞)が活性化して色むらやしみになります。欲しいところのメラニンは減って白髪になったりして、いらないところにメラニンが出てくる(笑)
- ワコ
- なんなんですか!?
- Dr.谷
- メラニンのアンバランスが起こってくるんです。でも10~11月にメラニンが全部定着するかどうか運命がまだ決まっていないので、この時期(9月頃)にリカバリーすることがとても重要です。トラネキサム酸などのお薬を飲んでメラニンを鎮静化するのを待ちましょうって。だいたいの人は夏に日焼けが起こっているので、来年は日焼け対策を夏前からしっかりやっていくストーリーを作っていくと、パフォーマンスのことも含めていいですよね。
- ワコ
- 確かにメラニン色素は髪の毛にあって欲しいのに・・・
- Dr.谷
- ホントに欲しいところには無くなり、いらないところに出てくる…
- ワコ
- 年中日焼け止めを塗るよう言われてはいますけど、5~9月くらいの時期は特に紫外線量が多いですから対策しないといけないですよね。先生もランニングをするときは日焼け止めを塗るんですよね?
- Dr.谷
- 実はメラニンは肌を守るために初夏から増えてきます。日焼け止めは普段使い用と、ランニングをするとき用で使い分けて塗っています。走るときには30分だけでも汗に強い日焼け止めを使っていますよ。今までは夏でも長いウェアを着ていたんですけど、いくらヒートギアといえど暑くてパフォーマンスは下がってしまいます。顔を全部覆い隠すフェイスマスクをつけて見た目は悪いし、走ろうと思ったけど息苦しくて走れない。結局見た目がいい方がやる気も出るし、続けることに繋がる。汗に強い日焼け止めに出会って夏に走ることのストレスが激減しました。
- ワコ
- テニスやゴルフをされる方にも良いですね。紫外線に晒されるだけじゃなくて走るから体脂肪も減ってくるじゃないですか、そうするとだんだん顔がシワシワになってきて・・・。そういう人を少しでも減らしたいです。そうなる前にできることがあるだろうなって思うんです。
紫外線による肌の老化
- Dr.谷
- 身体の筋膜って最近よく聞くじゃないですか。顔にも筋膜があるんですよね。筋膜は筋肉を包んでいる筋肉と筋肉の間の滑りを良くする膜って言われていたんですけど、筋肉にたどり着くまでにいろんな結合組織があって、その結合組織全部を筋膜っていうことが分かったんです。手関節鏡を使って生きている筋膜を見るアトラスで有名な手の外科医のフランス人のギャバンドゥ先生の著書には手の筋膜のことや、フラクタル理論のことなどが書いてあるんです。和訳だと内容がわかりにくいんですが。
- ワコ
- 医者の方って和訳の方が分かりにくいから英語で読むって聞きます。
- Dr.谷
- その著書を読み進めていくと顔にも同じようなものがあるのがわかりました。子どもの肌などはハリがあるので皮膚を押すと戻ってくるけど加齢や紫外線の影響で弾力がなくなるんです。皮膚の下や筋肉の上にはスポンジ状の組織があって、それが老化とともになくなってきます。セルライトのある部分をリリースするとすごく痛いのは、そこがガチガチに下と癒着していてふわっと感がなくなるから。この原因の一つは紫外線です。他にも紫外線の影響として日本人はそれなりにメラニンがあるので激しく日焼けするとくすみやシミが出てきます。最近ではコロナ感染症からマスクをつける習慣となり、不織布の慢性的な刺激によるマスクしみ(炎症性色素沈着)が増えています。
- ワコ
- 今日は若い女の子の撮影だったんですけど、みんな焼いているんです。若いから焼いているけどすすけた感じは無かったです。でも、30代以上になるとスモークがかった感じになりますよね。
- Dr.谷
- そうそう、黄色っぽい感じ。肌の色はメラニンとヘモグロビンでできているっていうけど、肌の状態がいい人はどれくらいの割合か、悪い人はどのくらいの割合か。アンテラ3Dという肌の状態を3Dで観察することができる装置を使えば、肌のメラニンやヘモグロビンの濃さがわかるんです。紫外線に暴露しているところと絶対にしていないところで比べてみると何色が強いか。皮膚表面の色もアンテラ3DではLABという数値を使って評価することができるんです。
- ワコ
- 年取ってくると黄ぐすみとか言うじゃないですか。実際に黄色くなるってことですか?
- Dr.谷
- 含有水分量が低下しているのと角質がちゃんと取られてないとそうなる。真皮の色とか言われているけど真皮には色がないから・・・
- ワコ
- 表面の角質が取れてないからいらないものがついちゃって黄色くなっちゃうってことですか?
- Dr.谷
- 角質が厚くなって透明度が低くなっていわゆる透過度がなくなる。皮膚って細胞成分が一番多いのは表皮なんです。表皮の中には表皮細胞(ケラチノサイト)がほとんどですけどメラノサイトやランゲルハンス細胞も存在します。真皮の細胞成分は線維芽細胞です。細胞が分泌したコラーゲンとかヒアルロン酸、エラスチンという細胞外マトリックスで成り立っています。細胞が入れ替わっているって言うのは表皮の話でメラニンの色素とかくすみは真皮の問題ではありません。真皮の細胞外マトリックス、細胞を守るスポンジのような成分が減ってくると細胞同士の居心地が悪くなって透明度がなくなる、細胞の周りのヒアルロン酸量が減るとか。そういうイメージを持ってもらえればいいかな。
- ワコ
- なるほど。くすむんですね。
- Dr.谷
- 表皮細胞の周りにあるヒアルロン酸が減ってくるので、一時的に補うとくすみが抜けます。また、ピーリングでちょっと角質を取ってあげると蓋が取れた状態になるからすぐに透明感が出ます。それと最近わかってきたことなのですが、マスクによる影響もあるのでしょうが、慢性的な肌の炎症による赤みがある人がかなり多いです。洗顔やスキンケアで肌を極力擦らないようにするということを気をつけるだけで赤みが改善し、肌トーンが明るくなることがありますよ。
肌のケアと健康は
密接につながっている
- ワコ
- スポーツしていて長時間日に当たっている人って体脂肪も減っていくし、顔も黄ぐすみしてきて、しわもすごく増えてくるでしょ。同じ年なのに全然違う状態になる。それって結構深刻で、本人はスポーツして気持ちいいと思っているけど、見た目年齢を気にして欲しいなって。みんな何かしなきゃとは思っているんですよ。でもどうしたらいいのかわからないからいい化粧品を使ってケアすればいいのかな、美容外科に行こうかなとか…
- Dr.谷
- そこまではいってないですよね。
- ワコ
- そこまでいかなくても平気でしょってみんな思う。でもスポーツをする人たちに警鐘を鳴らしていただいて…
- Dr.谷
- まず大切なのは日常のスキンケアですね。きめ細かい泡で洗顔すると、皮脂が泡に取り込まれて、ゴシゴシ擦らなくても汚れは落ちます。保湿剤はビタミンCなどの抗酸化成分を含むものがおすすめです。もちろん、屋外でのスポーツの際は、紫外線ケアは必要なのはいうまでもないのですが、毎日の洗顔やスキンケアもとても大切なんですよ。 私の専門はメソセラピーという治療です。皮膚の浅いところに有効成分を注入する、いわば、1ヶ月分の美容成分を打ち込んで、じわじわ効果が出てくる、しかも痛くない治療法です。これは回数を重ねると肌状態が良くなっていきます。そうすると表情筋も動きやすくなって、健康的に3~5歳くらい前の自分にアップグレードする。とにかく肌のケアと健康は密接につながっていると思います。
- ワコ
- 肌って誰かが触ろうとすると気配を感じたりしてすごいと思うんですよ。
ましてや人目に触れるところだから常にケアしなきゃいけない。でも走っている人は特に男性はどうでもいいと思っている人が多いのが現状ですね。
紫外線ケアの
選択肢を広げる
- ワコ
- 日焼け止めをつけたくないのよって人がいて、「何で?」って聞くと皮膚呼吸できないからって言うんです。実際はどうなんですか?
- Dr.谷
- ラップを巻いたりすると息苦しく感じたりするじゃないですか。感覚的なものの閾値が人によってかなり幅が広いからそれだと思います。そういう時にどう解りやすく説明するかですね。特に日焼け止めは塗ったら、落とさなければならないという2工程がめんどくさいという人も多いです。欧米人は皮膚がんのリスクがありますから、絶対的に紫外線ケアは普及しています。日本人では紫外線のリスクはエイジング、シミが増えるなどです。シミが増えても別に問題ない、という考えもありますが、健康寿命が伸びて、人生100年時代と言われるこれからの時代、”肌がキレイ”というのは大切だと思います。
- ワコ
- 先生は実際夏にランニングするときは、まず日焼け止めを塗るじゃないですか。走った後にシャワー浴びて普通にスキンケアをする、それから何をしていますか?
- Dr.谷
- 最近、夏がとんでもなく暑くなってきてしまって、ますます紫外線ケアは大切になってきていると思います。肌を直接守るために、日焼け止めによるケアは必須ですが、飲む日焼け止めというのもたくさん出てきています。日焼けしたとしてもなるべく肌にダメージを残さないように、肌に抗酸化力をつけていくことが目的です。紫外線をたくさん浴びたら、3日くらいトラネキサム酸を内服したり、ビタミンBやCのサプリをしっかり飲んだりしますね。
- ワコ
- 飲む日焼け止めは飲んだ方がいいんですね。
- Dr.谷
- メラニンの生成が起こる以前に活性酸素を除去しておくプロセスを身体の中に作っておく。それを飲んだからサンタンが起こらないわけじゃなくて、均一に焼ける、知人のサーファーが言っていたんだけど「焼けるのは焼けます。でも赤くはならない」、つまり炎症は起きにくい。
- ワコ
- 身体の中で炎症を起こさないようにしてくれているんですね。
- Dr.谷
- 元々皮膚が黒い人はメラニンが多くあるからそもそも日焼け止めがついているような状態になっている。だから少しの紫外線でまた黒くなるってことはないけど、赤くなって炎症を起こすと変な色素沈着の上塗りが起こる可能性があるのでそれを防いだ方がいい。いつも一定の黒さを保つためにもケアは必要ですね。あんまり焼きすぎると白斑みたいなものが出てきたりする人もいるし…
- ワコ
- 白斑!それって年齢的なものって思っていました。
- Dr.谷
- 黒い人が白斑とよく間違えられるのが脂漏性湿疹で色の白い人は赤く見えるんですけど、黒い人は赤なのに白く見えるんです。炎症を起こしているのがよく分からなくて、結局そこにうまくメラニンが生成されてなくて白く見える。身近にいい事例があって、口の周りが最近白いって(笑)。よく見ると白斑じゃなくて脂漏性湿疹だった。その人が持っている肌の色は変えられないので、その人の適正な肌の色を保つことが健康ってこと。
- ワコ
- その人が持っている元々の肌の色を健やかに保つことが重要ですよね。
スポーツと紫外線対策
- ワコ
- 「外に出るのはダメだよね、暑いし日焼けもするしいいことないよね。」みたいな風潮だけどオリンピックもあるしスポーツ熱も上がっているし。きちんと紫外線ケアをして外で過ごしてもらいたいですよね。
- Dr.谷
- 今まで運動を全然してこなかった人は何をきっかけに運動・スポーツに目覚めるか。その過程も面白くて、そこに紫外線ケアのヒントがある。多分そんなに日焼けをしないツールがいくつかあると、まずは健康のために運動をしようって思うのがストーリーだと思う。そうすると競技まではいかなくてもランニングとかウォーキング人口が増えてきて、それが日本全体の医療費の削減につながるかもしれない(笑)。それに、お金を払ってでも受けたい、いいケアが一般的に広まってくればいいんじゃないかなって思う。スポーツってすごく分かりやすい言葉ですよね、年間何本もマラソンを走っている人も週に2回くらい朝歩いている人も、みんな運動なんです。日光によってビタミンDが合成されて骨が強くなったりする。だからより外に出て活動することを増やすのに紫外線のケアを広めていく必要があります。
- ワコ
- そうですよね。スポーツする、外に出る。そういう人たちが日焼けしてシミができるのが嫌だっていうよりも、そんなことを気にせずに楽しめる世の中にどんどんなっていくべきだと思うし、今ならちゃんとケアできるものがたくさんある。そのセレクトの仕方が日焼け止めの○○がいい。だけじゃなくて選択できる幅をもっと広げていってもいい。
- Dr.谷
- そうするとスポーツ人口も増えるし。
- ワコ
- ランニング人口よりヨガ人口の方が増えている統計があるんですよ。理由は現代人が疲れているってこともあるけど日焼けしたくない人が多いから。でもそんなことを考えなくてもいろんなケアできる方法があるって私もご紹介できたらいいな。
- Dr.谷
- 私もランニングを初めて6年ほどになります。フルマラソンも6回、ハーフマラソンや10キロの大会などにも出ています。私の周りのランナーは月間300キロ走っているようなすごい人もたくさんいますが、みんなで走る朝ランや、美容のことを考えながら走るランイベントなどもやったりして、どんどん仲間が増えました。美容皮膚科医として、ランナーの方から肌の相談を受けることも多いですし、せっかくだからキレイにカッコよく、楽しくスポーツしたいという人を盛り上げる立場になりたいなと思っています。
走らなくてもウォーキングでも良いから、体を動かすことを続けることが大切だと思います。自律神経のバランスも整ってきて、気持ちいいので、習慣化できると健康にも繋がっていくと思います。そんな仲間を増やしていきたいです。
- ワコ
- 確かに。ちょっとずつ周りの人が感化されてやってみようかなっていうのがいいですよね。
- Dr.谷
- 私の周りでも一度はフルマラソンを走ってみたいとランニングを始めた人もいますよ。私みたいな人でもできるっていうので、周りも感化しちゃったかな?
- ワコ
- 私もトライアスロンはたまたま知っている人がやり始めたって聞いて、あの人が完走できるなら私もできるかなって思っちゃったんですよ。失礼ですけどスポーツするような方じゃないのに「誰でもできるよ」って言うし。ただやるにしても日焼けするしな、テレビに出るのでなるべく日焼けしてほしくないって言われているから気をつけないといけないけど、ファイター(日焼け止め)があるからってやり始めたんです。自分に合ったもので、より効率的に身体も鍛えながら肌も守れるといいですよね。